2014年度最優秀卒論賞を授与(2015年3月)
同窓会では2010年定例総会の決定に基づき、 在学生に毎年「奨学金」(「最優秀卒論賞」)を授与しておりますが、 2014年度も第6回目の「最優秀卒論賞」を授与させて頂きました。 この「奨学金」が今後とも在学生の皆さんに励みとなってくれることを願っています。 |
(第63期 新卒業生の皆さん) (+) 画像拡大
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卒業論文審査について | 橋川健竜(教養学部准教授) |
アメリカ科では英語による卒業論文は必修であり、 また学生にとっては駒場での勉学の集大成でもあります。 今年の卒業論文提出者は5名で、2月初旬に教員、 4年生および下級生が参加して、口述審査会が行われました。 今年は特に優秀な論文1本に最優秀卒論賞を授与することになり、 同窓会のご厚意により昨年に引き続いて奨学金も授与することができました。 卒業生の皆様のご配慮に、改めて感謝申し上げます。 以下は最優秀卒論賞を受賞した松本岳彦さんによるお礼の言葉と論文要旨です。 |
松本 岳彦(まつもと たけひこ) |
この度は、最優秀卒業論文賞を頂き、誠にありがとうございます。 アメリカ科同窓会の皆様に深く御礼申し上げます。 このような栄誉ある賞を頂けたことを大変光栄に思っております。 4月からは学問の世界を離れ民間企業に就職いたしますが、 アメリカ科で学んだことを活かして一層精進していきたいと存じます。 |
Controversy over the Drilling Project in the Arctic National Wildlife Refuge:
The George W. Bush Administration and Its Environmental Policy (北極圏国立野生動物保護区における石油開発計画をめぐる論争――ジョージ・W・ブッシュ政権とその環境政策) 本論文は、ジョージ・W・ブッシュ政権が進めようとしたが実現せずに終わった 北極圏国立野生動物保護区 (Arctic National Wildlife Refuge = ANWR) での石油開発問題を、 人間と自然の相互関係を分析する環境史(environmental history)の視点を用いて、 政権の環境政策の一環として分析するものである。 ANWRはアラスカ州北東部に位置する自然保護区で、多様な動植物による固有の生態系を有している。 同地は人間の活動の影響から隔離されており、 その手つかずの自然はときにアメリカの原生自然 (wilderness) を重んじる価値観と結び付けられ、 手厚い保護を受けてきた。 だがANWRは合衆国屈指の化石燃料埋蔵地でもあり、石油開発を行えば合衆国のエネルギー事情や 経済情勢が大きく改善する可能性があると言われている。 しかし、石油開発はカリブーなどのANWRの動植物に悪影響をもたらすとの反対も多く、 先住民、環境保護派、エネルギー業界、議会政治家など多くの主体を巻き込みながら、 アメリカでは1970年代から同地の開発に関する議論が続いてきた。 ANWR石油開発問題の歴史において、ジョージ・W・ブッシュ政権期は議論が特に高まった重要な時期である。 ブッシュ政権は中東情勢や原油価格の高まりを背景に、化石燃料の国内生産増加によるエネルギー安全保障の強化を訴え、 ANWR開発の実現をエネルギー政策の優先課題とした。 当時の合衆国にはANWRの埋蔵量に匹敵する量の石油を得る代替策がいくつかあったが、政権はANWR開発に固執し続けたのである。 このようなブッシュ政権の姿勢には、政権を担った新保守主義者の環境政策論、ひいては環境認識が色濃く表れている。 ブッシュ政権は環境政策の立案にあたって「環境クズネッツ曲線」を信奉し、自然環境の保護より経済成長に重きを置く傾向があった。 政権にとって、アメリカに残された原生自然の象徴的存在として語られるANWRの開発を実現することは、 今後アメリカが自然保護と経済開発のバランスをどのようにとっていくかを占うという点で、極めて重要な意味を持っていた。 環境史の立場に立てば、ANWRが象徴的意味をもつ保護区であるからこそ、 ブッシュ政権はこれをその後の環境開発を左右する試金石もしくは先例と認識し、積極的な開発推進が政権の自然へのアプローチとなったのである。 |
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